自分の配偶者や子供にかぎって、自分の死後の財産について争いはしないと決め込み、その意思を明確にしないことが、死後の財産の争いを招き、仲のよかった家族に亀裂を生じさせることも少なくありません。
そこで、死後に自分の意思を反映させる手段として、「遺言」は重要な手段です。
しかし、遺言を書けば何でも効力があるわけではありません。遺言は法律で厳格なルールが決まっています。せっかく、死後に備えて準備した遺言が無効であったり、自分の意思に反した内容で実現されては意味がありません。
また、きちんと作成された遺言も保管や管理に問題があれば、残された家族らは遺言の存在に気が付くことなく、相続人同士で話し合い遺産を分割してしまうおそれもあります。
遺言は、自分の意思が死後に最大限反映されるよう法律で定められたルールにしたがって作成することが必要です。
遺言の方式には、いくつかの種類があります。
大きく分けると、通常の方式である普通方式と、死が目前に迫っている場合や伝染病等で隔離されている場合など、普通方式による作成の余裕がない場合の特別方式があります。
ここでは普通方式によるものをご紹介いたします。
自筆証書遺言は自分一人でも作成可能な最も簡単な方法です。内容や存在について誰にも知らせる必要はありません。ただし、内容に不備があったり、紛失・偽装、死後に発見されない可能性があるので、保管及び管理には細心の注意を払う必要があります。
公証人に口頭で内容を伝え、公証人が遺言書を作成し保管する方法です。相続人が多い場合や、相続財産が多い場合、相続人に争いが生じる可能性が高い場合などは、確実に遺言を執行させるために利用されます。また、自分で読み書きができない場合は、自筆証書遺言を利用することができませんので、この方法で作成することをお奨めします。
遺言者が遺言書を自分で作成し、署名・押印したものを、公証人に提出して、公証人に保管してもらいます。自筆証書遺言とは異なり、自署である必要がないので、代書による作成やパソコン等での作成が可能です。ただし、遺言の内容に不備があったりしますと、トラブルになったり無効となるリスクがあります。
メリット(長所) | デメリット(短所) | |
---|---|---|
自筆証書遺言 | ・誰にも内容を知られずに作成することができる ・いつでも、1人で容易に作成できる ・費用がかからない |
・形式等の不備の危険性 ・偽造・変造・未発見のおそれがある ・開封時、裁判所で検認手続きが必要 (但し、法務局で保管の場合は不要) |
公正証書遺言 | ・公証人が作成するので無効の可能性が低い ・偽造・変造・未発見のリスクがない ・検認手続きが不要 |
・公証人・証人に内容が知られてしまう ・作成までに、諸手続が必要 ・費用がかかる |
秘密証書遺言 | ・遺言の存在を明確にできる ・偽造のおそれが少ない ・自筆でなくてもよい |
・内容の不備の可能性 ・証人には内容がしられる ・費用がかかる |
公証人役場へ行くまでに、対象となる財産や相続させたい内容などを検討します。
公証人役場へ行き、ご自身の財産の内容や家族関係、遺言したい内容等を公証人に伝えます。
内容の伝え方は、口頭で伝えるのが原則ですが、耳が聞こえない方や口がきけない方は、筆談や通訳人を通じて、手話などで伝えます。
また、遺産の内容や家族関係を正確にするために、戸籍や不動産の登記簿謄本等を提出する必要があります。遺言の内容を具体的にするために、公証人と何度か打ち合わせを行います。
公証人が作成した公正証書遺言の内容を、遺言者と証人の立会いのもと、公証人とともに内容を確認します。この際も、内容の伝え方は、口頭で伝えるのが原則ですが、耳が聞こえない方や口がきけない方は、筆談や通訳人を通じて、手話なで内容が正確であることを確認します。
※以下の場合は証人になることができません。
未成年・推定相続人(将来相続人となる予定の人)・受遺者(遺言による遺贈を受ける人)・推定相続人・受遺者の配偶者。直系血族・公証人の配偶者・四親等内の親族及び公証役場の職員
遺言者が内容が正確であると認めた場合には、遺言者と証人、各自が遺言書に署名・押印します。
公証人が方式に従って作成された遺言である旨ことを承認し、署名・押印します。
公正証書遺言は、原本・謄本・正本の3部が作成されます。このうち、原本は公証役場に保管され、日本公証人連合会本部のシステムに登録されます。謄本・正本は遺言者に交付されます。
作成された公正証書遺言の閲覧や謄本の請求は、遺言者の方以外はできません。
遺言者の方が死亡された際に、相続人等がその旨を証明することで、公正証書遺言の閲覧や謄本の請求が可能となります。
⇒ 公証人による本人確認の際に必要です。
⇒ 推定相続人や遺贈される方を特定するために必要です。
⇒ 公証人に支払う手数料を算出するために必要です。
⇒ 遺産に不動産が含まれる場合は、対象となる不動産を特定するために必要です。
※この他にも事案に応じて、公証人より必要な書類の提出を求められる場合があります。